成長企業を見る目を活かし、新しい運用哲学によるファンドづくりに挑戦中。
小口 琢也TAKUYA OGUCHI
運用部 グローバル株式グループ
ポートフォリオマネージャー
特筆すべき技能を持たない自分でも、採用人数が少ない少数精鋭の環境で努力すれば、専門性の高い主体的な役割を担うことができる。部活動で硬式野球に注力してきた小口はこのように考え、野村アセットマネジメントを選んだ。入社10年目、念願であった運用部でのキャリアをスタートさせた今、これまでの経験がすべて自身の強みになっていると実感している。
世界中のマネージャーから話を聞ける。
キャリアの基礎を形づくった時期
入社後、海外の運用会社に運用を委託したファンドを管理する部門に配属されました。最初の部署で、ファンド運用の基本的な仕組みを資金の流れから理解できたことの意義は大きかったと思います。
また、海外ファンドの新規調査業務では、世界中の魅力的なファンドを調査し、当社での取り扱いを提案するという業務に取り組みました。各国の優秀なポートフォリオマネージャーに取材し、彼らがどのような運用手法や哲学で運用しているのかを直接聞ける経験は、自身が運用する上での重要な基礎になっていると思います。
そして、3年目には野村ホールディングスのグループ広報部へ出向しました。ここでは、野村グループを正確に伝える記事を書いてもらうため、多くのメディアに対して情報を提供。初めての経験の連続で苦労しましたが、先輩の仕事ぶりを真似ることから始め、記者のニーズに沿って情報提供を丁寧に行うなど、常に誠実に社外の人たちと向き合い、信頼を得られるよう努めました。
付加価値の高い情報は現場にある。
こだわりのリサーチで全国各地へ
グループ広報の仕事を2年ほど経験した後、野村アセットマネジメントに戻り、企業調査部でアナリストとしての第一歩を踏み出しました。しかし、より早い時期から調査・運用部門に配属された同期入社のメンバーたちは、すでにチームでも重要な存在。早く彼らに追い付こうと、「背水の陣」の思いで業務に取り組みました。
工夫したのは、付加価値のある情報提供を目指すこと。企業リサーチでは財務諸表分析が重要ですが、財務データは誰もがアクセスできる情報であり、ここから導かれる情報によって差別化することはなかなか難しい。そこで私は、現地調査を重視しました。
小売業界の担当でしたので、全国各地のさまざまな小売チェーンを見て回りました。出張先で持参した私服に着替え、店舗では商品の価格やどのような売り方をしているかを比較し、場合によってはどこまで値切れるかを試してみました。地方に拠点を持つ企業を訪問し、社内の雰囲気や社員の方々の表情を観察することもありました。このような現地調査と同時に、ただ情報発信するだけでなく、自分が推奨する銘柄について実際に売買行動を起こさせて、運用担当者を勝たせることを重視し、収集した情報を「誰にどのように伝えるか」についても工夫しました。
現場でしか得られない他の市場参加者が知らない無形の情報に目を向けることで、成長企業を見極め、少しずつ株式の運用パフォーマンスのアルファ、すなわち市場の平均的な収益を超えるリターンにつながる情報提供ができるようになったと感じています。さらに経験を積み上げていけば、日本株アナリストとしてステップアップできる道筋も見えてきました。しかし、自分自身の成長という観点では、新しい領域にチャレンジしたほうがプラスになるのではないかという思いが湧き上がっていました。ちょうど入社10年目を迎え、32歳になっていました。
まずは誰よりも多く打席に立とう。
そこから新しい目標も見えてくる
そう考え始めていた2021年の4月に異動となり、運用部のポートフォリオマネージャーとして、新たな業務に挑戦することとなりました。
所属する外国株式グロース戦略の運用チームには、若手から運用調査経験が約30年のベテランまで、幅広い経験年数のポートフォリオマネージャーが在籍しています。女性が多く、東欧出身のメンバーもいて、多様な観点から銘柄を見ることができるチーム構成です。運用者としては新人の私ですが、直属の上司の助言に沿って、「できるだけ多くの打席に立つ」ことを行動原則とし、新規銘柄を検討するミーティングなどで思ったことを気負わずに発言したり、積極的に有望企業の提案をするようにしています。多様なバックグラウンドを持つメンバー間で、率直にディスカッションを交わす環境は、高いパフォーマンスを生み出す必要条件だと感じています。
アナリスト経験を活かし、運用にダイレクトに反映するスピード感で有望企業の調査・検討を繰り返す毎日ですが、これらの業務の延長線上には、自分の投資哲学に則った新しいファンドの設定・運用という大きな目標があります。現場で磨いてきた成長市場を見る目を活かし、社会変化による潜在市場の拡大によって持続的に成長できる企業に投資するファンドをつくりたいと考えています。
その実現に向けて、チームメンバーやプロジェクトメンバーと議論を深めています。将来的には、投資家に顔が見える形で説明責任を果たしながら、長期的に超過収益を獲得し、「あなただから任せたい」と言ってもらえるポートフォリオマネージャーを目指したいと思っています。